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【米国事例紹介】病気になり始めると「ボディバッテリー機能」のエネルギーレベルがチャージされにくくなる理由


ガーミンや類似したウェアラブル端末が、病気を予想するという話を聞いたことはあるだろうか。本当に一般的なフィットネストラッカーが病気を教えてくれるのか。それとも、ウェアラブルファンが端末を信じすぎているだけなのか。

まず重要な注意点から始めさせてほしい。前提として、ガーミンウォッチは医療機器ではなく、また診察や病気の治療、経過監察を目的として設計されていない。健康状態が本当に不安な場合は、速やかに医者や専門機関に相談をしていただきたい。

人の体は、エクササイズや企画書の作成、晩御飯の用意といったタスクをこなす上で一定量力の源が必要となる。この力の源は、充電式バッテリーのエネルギーのようなものであり、ひとりひとりがそれぞれ独自のバッテリーをもっているということになる。身体的、または肉体的ないかなるストレスを感じるとバッテリーは消費され、寝るなどの休息をとることで再充電される。

ガーミンのボディバッテリー™はユーザー個人のバッテリーの状態を明らかにするために、ストレス量や回復量を計測するFirstbeat社の分析アルゴリズムを使っている。では、これはどのような仕組みなのだろうか?人の体の複雑な神経系は、自律神経系ANS (Autonomic Nervous System)とよばれる特定の器官が担っている。ANSは名前が示す通り、消化機器や心拍数、呼吸のような、特定の身体機能を自動で調節するものである。[1]

ANSはストレス状態と回復状態を交感神経と副交感神経を通してコントロールしている。交感神経はストレスに対する本能的な「闘争と逃走」の反応を司る。これが体の活動に要する神経である。一方で、副交感神経は「休息と消化」の反応を司っている。[1]

心臓が教えてくれること

心臓の鼓動は、ANSによってしっかりと制御されており、心拍数と心拍変動数(Heart Rate Variability)のどちらの決定にも関わる。HRVとは、心拍と心拍の間の時間変化を表すもので、変動数は0.01秒単位にも及び、通常の心拍数(1分当たり心拍数)ではHRVの変化に気づくことはできない。

つまり、一瞬から次の一瞬までの心拍の変化を分析することで、「闘争と逃走」状態と「休息と消化」状態の移り変わりを明らかにすることができるのだ。もしストレスを感じているときは、1分当たりの心拍数は上がり、HRV(心拍間の時間)は下がる。心拍数でも気づくかもしれないが、HRVの方が現状を最も明らかにできる。

エクササイズすることで起きるストレスは、心拍数を上げ、HRVは下げる。休息をとったりリラックスをしているときは、心拍数は下がりHRVは上がる。言わば、心臓は良くメンテナンスをされたエンジンのようなもので、本当に必要な数だけ回転し、1秒単位で回転を変えられるほど調整されているのだ。

では、誰がこれをコントロールしているのだろうか。低いHRVはストレス状態を示し、ストレス状態の場合は交感神経が調整を担う。高いHRVは休息状態を示し、休息状態の場合は副交感神経が調整を担っている。[2] [3]

これらすべてのバランスが整ったとき、ボディバッテリーは時間の経過とともに正常な消費と充電を表してくれる。そのサイクルが中断される場合、例えば、日中の消費が速くなったり、夜間に充電が遅くなったりすることがある。このような混乱が起きているときこそ病気と判断ができる。


図1:再充電を行えない状態のボディバッテリーの推移

病気の時に起こること

病気になると、主にホルモンに促され免疫反応が起きる。ホルモンは、例えば体の白血球の製造を促すなど、交感神経が活性化を促すようANSに干渉する。これがまさに体が病気と闘っている状態であり、心拍数はあがり、汗をかきはじめる状態である。生理学的には、身体がストレスを感じると、交感神経が機能を担う。いくつかパターンはあるものの、HRVは通常ならばゆっくりと低くなる一方で、病気の時は、HRVが急速に低くなる場合がある。[3]

早い段階で、低いバッテリー状態が病気や他の原因によるものだと断言することは難しい。もし、例えばわずかな頭痛がある、のどの痛みや異常なくしゃみがあるとすれば、病気かもしれないといえるだろう。病気の場合、通常の心拍数よりも高い傾向が見え、トレーニング中ではいつも以上に辛いと感じるはずだ。

発熱は身体に大きなストレスを与えるので注意が必要だ。1度の温度変化により、平均心拍数に対し、一分当たり8回を超える振動が増える。[4] 生理学的にバランスが悪い場合にも、高いストレスレベルが表示される。糖尿病や甲状腺機能低下症または甲状腺亢進症機能の場合、ストレスチャートは高く反映され[1]、ボディバッテリーは低く表示される。

健康でいよう

身体のストレスへの反応は、言うならば戦いの準備である。激しく働くためのエネルギーを与え、集中力を高める。また、筋肉や心肺機能を鍛えることで、健康状態を保つことができ、次の身体的チャレンジの後押しをしてくれる。

困難に直面しても、人は適応しより強く成長する。しかし、ストレス状態が強く長く続いた場合、不健康のもとでしかない。[5] 過剰なストレスは、時間が経過とともに反抗する能力を下げ、免疫システムを弱める。[6]

十分な食事と睡眠をとり、適度な運動をすることで体を養うことができる。労働や人との過度な交流などから休憩を取ることも、健康状態の材料の一つだ。ボディバッテリーは健康の全体像に気づきを与えてくれるものであり、人が健康でなお幸福でいられるよう後押しをてくれる。

エキスパートアドバイザー:

Johanna Toivonen, Physiologist at Firstbeat Technologies; M.Sc. Biomechanics and Physiology (University of Jyväskylä).

参考文献

[1] B. Derrickson, Human Physiology, Hoboken, NJ: John Wiley & Sons, Inc., 2017.
[2] Firstbeat Technologies, Oy, “Stress and Recovery Analysis Method Based on 24-hour Heart Rate Variablity,” White Paper, Jyväskylä, Finland, 2014.
[3] L. Borovikova, S. Ivanova, M. Zhang and e. al., “Vagus nerve stimulation attenuates the systemic inflammatory response to endotoxin,” Nature, vol. 405, p. 458–462, 2000.
[4] J. . Karjalainen and M. . Viitasalo, “Fever and Cardiac Rhythm,” JAMA Internal Medicine, vol. 146, no. 6, pp. 1169-1171, 1986.
[5] M. Agnese, “The effects of chronic stress on health: new insights into the molecular mechanisms of brain–body communication,” Future Science OA, vol. 1, no. 3, 2015.
[6] J. Morey, I. A. Boggero, A. B. Scott and S. Segerstrom, “Current Directions in Stress and Human Immune Function,” Curr Opin Psychol, no. 5, pp. 13-17, 2015.



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