生理学的測定
トレーニングステータス
トレーニングステータスは、現在のフィジカルや、トレーニングにより発生する身体への負荷を示し、トレーニング量が適切であるかどうかを判断する指標として活用することができます。
Firstbeatによる測定では、個人の様々な生理学的データを活用します。フィットネスレベル(VO2 max:有酸素運動能力)における変化や、現在のトレーニング負荷(7日間)、トレーニング負荷における変化を考慮し、トレーニング管理に役立つ情報として提供されます。
簡単にいえば、トレーニングをストップすることでフィットネスレベルは低下しますが、以前のトレーニング負荷によっては、通常のトレーニングルーティンの中断がフィットネスレベルの上昇につながることもあるのです。同様に、通常のハードなトレーニングによってフィットネスレベルを改善するものの、頻繁に無理をし過ぎて、過剰トレーニング現象によりフィットネスレベルが低下し始めることもあります。
なぜこうした現象が起こるのでしょうか。あなたが何週間にもわたってトレーニングを継続しているとしましょう。フィットネスレベルは普通なのに、日々のわずかなアップダウンが増えています。この傾向は自動的に特定され、現在のトレーニングは「生産的」であると認識されます。同様に、現在のトレーニングは非常にハードであるにもかかわらずフィットネスレベルが低下のパターンを示すこともあります。その場合、トレーニングは「過剰」であると認識され、リカバリー時間の追加が推奨されます。
認識されるトレーニングステータスは以下の通りです。
ピーキング – 理想的なレースコンディションです。 トレーニング負荷を減らしたことで身体が回復し、以前のトレーニング分が完全に補われています。このピーク状態は短い間しか維持できません。
プロダクティブ – 現在の状態を維持してください。 トレーニング負荷があなたのフィットネスを理想的な方向へ導いています。トレーニングにリカバリー時間を組み込んでフィットネスレベルを維持するよう心がけてください。
メインテイニング – 現在のトレーニング負荷はフィットネスレベルを維持するのに十分です。改善を図るには、さまざまな運動を追加するか、トレーニング量を増やしてみてください。
リカバリー – 軽度なトレーニング負荷が身体の回復を促しています。これは、長期間のハードトレーニングには不可欠です。状態が整い次第、より高いトレーニング負荷に戻ることができます。
アンプロダクティブ – 現在のトレーニング負荷レベルは良好ですが、フィットネスレベルは低下しています。体が回復したがっているのです。ストレス、栄養、休息を含め健康全体に留意してください。
ディトレーニング – あなたは1週間またはそれ以上の期間、通常よりはるかに負荷の少ないトレーニングを行っており、それが健康に影響を及ぼしています。改善を図る場合はトレーニング負荷を上げてみてください。
オーバーリーチング – あなたのトレーニング負荷は非常に高く、逆効果です。身体は休息を必要としています。スケジュールに軽めのトレーニングを追加することで、身体に回復の時間を与えてください。
ステータスなし – トレーニングステータスの判定には、ランニングやサイクリングで測定されたVO2 Maxデータを含む、1~2週間のトレーニング履歴が必要です。
VO2 Max
VO2 Maxの数値は、自身のフィットネスレベルを把握し、トレーニングプランを立てる上で重要な要素となります。この数値は、運動中に体内に取り込まれる酸素の最大量を表しており、全身持久力の指標として用いられています。VO2 MAXを数値化することで、その人が行える適切な運動強度を把握することができ、どれくらい伸びしろがあるかを知ることができるのです。
自身のVO2 Maxについて、その数値が高ければ高いほど粘り強さやスタミナのレベルが高いと判断できます。しかしながら、その値をどの程度活用できるかについては、身体活動に関する様々な要素や遺伝的要素も関わってきます。とはいえ、適切なアプローチをとることで、誰でも自分のVO2 Max値を伸ばすことが可能です。
既に高いVO2 MAX値を持つアスリートであれば、その値を伸ばすことは困難かもしれません。しかし、この値が低いアスリートであれば、適切なツールとトレーニングにより、能力を伸ばすことが可能なのです。
アクティブな生活は人間を幸せにし、寿命を延ばすということは数々の研究から実証されています。VO2 Maxは、そのことを科学的側面から調査し検証する際に使用される、主要な測定基準です。もしあなたがさらなる改善を目指すのであれば、あなたを正しい方向へと導くツールを提供できるデバイスを選ぶべきでしょう。
パフォーマンスを重視するユーザーにとって、VO2 Maxはまた別の使い方があります。運動中に身体がより多くの酸素を使うと、より多くのエネルギーが生成され、これまでより速く走ることが可能になります。
サイクリングVO2 Maxを記録するにはパワー計と心拍計が必要です。
サイクリングVO2 Max測定のヒント
VO2 Maxを正しく測定し伸ばしていくことで、高負荷時に耐えられる持久力を養成することができます。VO2 Maxを測定するには以下のポイントに注目してください。
- 最大心拍数の70%以上を維持するようにしてください。
- パワーを一定に保つようにしてください。
- できるだけ平坦基調の道で計測をおこなってください。
- ドラフティングが多く発生するグループでの計測は避けてください。
トレーニング負荷
トレーニング負荷は、過去7日間のトレーニングの合計値を表します。サイクリングコンピューターEdge® 1030により、今週のトレーニング負荷が、フィットネスレベルを考慮した上で長期のトレーニング負荷と比較され、負荷が最適な範囲であるかを表示します。
トレーニング負荷は、トレーニング量が適切であるか、もしくは過剰だったり不足しているのかを示します。
トレーニング負荷には以下が含まれます:
高 – 現在のフィットネスレベルおよび最近のトレーニング習慣から見ると、あなたのトレーニング負荷は過剰であり、有益な効果を生み出せていません。
最適 – フィットネスレベルの維持および向上に理想的な範囲です。このペースで続けてください。
低 – あなたのトレーニング負荷は、現在のフィットネスレベルや最近のトレーニング習慣から見ると低すぎます。この負荷ではフィットネスレベルの向上は期待できません。
リカバリータイム
リカバリーはトレーニングプロセスの中で不可欠な要素です。リカバリー時間は、トレーニングに対する身体の疲労度や筋肉などのフィジカル機能の回復に必要な栄養素の補填状況など、身体の適応性によって規定されます。リカバリーが不十分だと、トレーニング効果が十分に得られない可能性が高まります。
リカバリーレベルを記録し管理することで、より効率よいトレーニングプランを立てることが可能になります。また、リカバリー状況を把握しておくことで、大切なレースなどイベントに対してのピーキングにも役立ちます。
毎回のワークアウト終了時、デバイスは、体力が100%近くまで回復しハードなトレーニングを行えるまでのリカバリータイムを表示します。Firstbeatが提供するデータは、生理学データに関するユニークなデジタルモデルを使用し、ユーザーの能力を加味したデータとして算出されます。測定は、トレーニング効果のスコア、トレーニング中に記録されたパフォーマンスとフィットネスレベルの評価、そしてワークアウト開始時からデバイスに表示される残りのリカバリ時間の組み合わせから測定されます。
デバイスが表示できる最大リカバリー時間は4日
信頼性のあるデータを得るには、デバイスがあなたのフィットネスレベルを正確に記録できるよう、そのデバイスを使って複数回のアクティビティを行うのがよいでしょう。蓄積されたデータにより、正確なリカバリー時間が算出されるようになります。
機能閾値パワー(FTP)
FTPはライダーが疲労しないで1時間維持できる最大パワー値を示しています。FTP値は、パワートレーニングに必要となるパワーゾーンを算出する上で重要な値です。互換性のあるEdge®は、FTPテスト機能または通常のライドデータから、自動的にFTP値を算出します。
いずれの場合も、出力されたパワーに対する心拍データを分析することでFTP値を算出します。デバイスに多くのフィットネスデータが蓄積されることで、算出されるFTP値も信頼性の高い値となります。
Edge上では、パワーウェイトレシオと紐づいたFTP値を表示し、レベル別にカラーリングされたグラフで確認することができます。これにより、パワーウェイトレシオを瞬時に把握することができます。
FTP測定のポイント:
FTPテスト:
- パワー計と心拍計を使用し、ウォームアップを行います。その後、15~20分の間に運動強度を3~4分ずつ徐々に上げていきます。
- 上がった強度に対する心拍数に基づいて、FTP値を測定します。
- 算出された値はEdge® にデータとして記録されます。記録されたFTP値を上回る値が再度記録された場合、新しい値に基づいてパワーゾーンが自動的に再計算されます。
- テストは勾配が一定の道路かインドアトレーナーでおこなってください。
自動FTP検出:
- 20分平均パワーを設定すると、設定した値が現在のFTP値の95%を越えると、新しいFTP値に更新するようメッセージが表示されます。
- 算出されたFTP値は、更新するか否かをデバイス上で選択することもできます。
トレーニング効果
体がどのように機能するかで、トレーニングのタイプが、期待される結果のタイプや将来に向けて準備すべきパフォーマンスのタイプを決定します。
トレーニング効果は、各トレーニングのセッションが今後のフィットネスレベルにどの程度影響するかをプレビューできるメトリックです。トレーニングから最大限の効果を得るには、適切なリカバリースケジュールを組み込むことが当然重要となります。Edge 1030では、次の2種類のトレーニング効果測定が表示されます。
有酸素トレーニング効果
エクササイズの有酸素効果を測定し、有酸素運動能力の向上にどの程度影響があったかを評価します。
有酸素トレーニング:
- 有酸素のエネルギー生成を向上
- 脂肪をエネルギーに活用
- 持久力とスタミナ
- 長期的なパフォーマンス能力
無酸素トレーニング効果
身体の燃料を効率よくエネルギーに変換するには酸素が必要ですが、必要エネルギー量が、供給できる酸素量を超えることもあります。幸い、この現象が起きたときでも、身体にはバックアップのプロセスが作用することで、効率的ではありませんが、運動を継続できるようになります。無酸素運動に有効なトレーニングを行うことで、継続可能な時間を増やすことができます。
無酸素トレーニング:
- 無酸素エネルギーの生成を開発
- スプリント能力向上
- 疲労抵抗
- 最大パフォーマンス能力
有酸素と無酸素トレーニング効果は0~5の基準で、あなたのフィットネスレベルやトレーニング生活を評価します。
0―なし、1―やや改善、2―維持、3―改善、4―大幅に改善、5―過剰
パフォーマンスコンディション

現在のフィジカルコンディションを把握するために、パフォーマンスコンディションに注目します。ライディングの最初の6~20分間で、パワー、心拍数、心拍変動を分析します。結果は、VO2 Maxのベースラインとのリアルタイムの偏差で、表示の各ポイントはあなたのVO2 maxの約1%を示します。数値が高いほどその日のコンディション状態が良いことを表します。
デバイスが新しい場合は、フィットネスデータの蓄積中であるため、最初の数回のライドで結果が変動することがあります。フィットネスデータの蓄積により、パフォーマンスコンディションの値は日々のコンディションに関する信頼できる指標となります。
ライドスタート後、アラートのお知らせに加えて、パフォーマンスコンディションをデータ項目としてトレーニング画面に追加し、確認することもできます。パフォーマンスコンディションは、その時のライドに対してコンディションがどう影響しているかを見極める客観的な指標です。
HRVストレステスト
高強度の運動に向けた体調が整っているか、それとも軽めの運動を必要としているか、判断に迷うときは、ストレススコアをチェックしてみましょう。
心身ともに状態が万全なときは、より効率よくトレーニング効果を得られるでしょう。一方で、リカバリーが不十分であったり、オーバートレーニングに陥ったりしているときは、トレーニングがかえって逆効果になることもあります。
ストレススコアは3分間のテストで計測され、その間に心拍変動(HRV)が分析されます。結果のストレススコアは0~100までの数値で表示され、数値が低ければストレスが低いことを示します。ストレススコアは、あらゆる活動に対して身体が対応可能であるかを判断する目安となります。毎日、同じ時間に同じ条件下でテストを行うと、より正確な結果を得ることができます(運動後ではなく、運動前の測定をお勧めします)。それにより、日毎や週毎の心身の状態変化に対する感覚を身に着けることもできます。
HRVストレステストを測るときは、立って行います。そうすることで、低レベルおよび中レベルのストレスを検知することができます。横になって測定すると、中庸レベルのストレスが測定できないことがあり、立って測定すると心血管にやや負担がかかります。この負担は、ストレスレベルが非常に低い場合と比べ中庸のときに、HRVを有意に低下させる原因となります。
サイクリングダイナミクス
Garminが提供するサイクリングダイナミクスによるデータ分析により、ペダリングの特徴やクリートポジションを把握、改善につなげることができます。
ペダルの踏圧分布を測定するPCO(プラットフォームセンターオフセット)など、ペダル型パワーメーターだからこそ測定可能なデータを提供します。
サイクリングダイナミクスは、一連の高度なメトリクスにより、ポジション、自転車のセッティング、トレーニング時間その他の要素に基づいたライディングやパフォーマンスの変化を観察します。
サイクリングダイナミクスがもたらすデータにより、サイクリスト、コーチ、フィッター、あるいは理学療法士は、より良いペダリングを行うために必要なアプローチを把握することができます。
シッティング/ダンシングポジション
人にはそれぞれ、上り坂やスプリントの際の好みの走行ポジションがあります。Vectorはペダルへの負荷を比較することで、走行中のライディングポジション(シッティング/ダンシング)を検出し、測定します。互換性のあるEdgeサイクリングコンピュータが現在のポジションを表示し、そのポジションの頻度や継続時間、パワーデータなどの概要を、すべてリアルタイムで表示します。ライド終了後には、オンラインのフィットネスコミュニティGarmin Connect™にデータをアップロードすることができます。そこでは、各ポジション、関連のケイデンス、速度を確認したり、シッティング/ダンシングの所要時間を比較したりすることができます。さらにポジションがペダリングにどのように作用しているかを把握したり、上り坂やスプリントを分析したりすることも可能です。詳細なデータにより自分のライドを一目で確認でき、効果的なポジションを判定したり、ライディングの特徴を分析したりすることに役立ちます。
パワーフェーズ(PP)
パワーフェーズは、ペダリングが生み出すパワーの詳細なデータを測定します。トルクのかかり始め、終わりの角度や、入力のピーク角度を測定できます。デュアルセンサーのパワーメーターVectorを使用すると、1回転ごとのペダリングを詳細に分析し、左右のペダリングの差を把握できます。
パワーフェーズは角度と弧の長さの組み合せで測定されます。0度は12時の位置、180度は6時の位置で表示されます。パワーフェーズの長さは開始角度と終了角度の差で測定されます。例えば5度の角度で開始し220度の角度で終了すると、パワーフェーズの弧の長さは215度になります。デュアルセンサーのペダルにより、この情報は左右の足の両方から測定されます。パワーフェーズピーク(PPP)の数値を使って、パワーの発生しているピーク角度を確認することができます。ピークパワーフェーズのデフォルト設定はパワーアウトプットの50%ですが、この数値は任意で設定変更をすることができます。
パワーフェーズの数値はグラフとしてEdgeデバイスやGarmin Connectで確認することができます。自分のペダリングを簡単に可視化できます。
プラットフォームセンターオフセット(PCO)
PCOは、ペダル面に対する踏圧の分布を測定します。ペダル面のセンターに対し、内側に力がかかっているのか、もしくは外側に力がかかっているかを把握できます。これらのデータを分析することで、適切な自転車やクリートのポジションを見極めることができます。
PCOはミリメートルで測定されます。プラス値(+6mm等)はペダルの外側に向って力が増加していること、マイナス値(-4mm等)はペダルの内側に向って力が増加していることを示します。これらの情報はEdgeデバイスでグラフとして見ることができます。赤い線は最新の10秒間平均値を示し、青い線は前回の30秒間の平均値を示します。
右/左バランス
デュアルセンサーのVectorペダルは合計パワーを測定できるだけでなく、左右でのパワーの出力割合も測定します。
左右の足の力がアンバランスだと、筋疲労やケガのリスクが高まることがあり、左右均等であると両足が均等に働いて効率をより高めていることを意味します。これにより、左右のペダリングのバランスが整っているかを把握することができます。